中医学では、病気の原因を「病因」と言い、からだの外からくる「外因」、からだの内側から生じ、過度の感情が原因となる「内因」、外因にも内因にも属さない「不内外因」の3つに分けて考えられています。
内因は、気持ちのありようですが、喜んだり、怒ったり、悲しんだりすることはごく自然なことです。しかし、感情と臓腑には強い結びつきがあると考えるため、感情の動きがとても強すぎたり、小さなストレスでも長期間に及び過ぎたりすると感情が内臓(臓腑)を痛めることがあると考えます。
「喜」喜び過ぎると、気緩む。血の通り道が弛緩するため、心の気が緩む。精神集中が出来なくなることもある。
「怒」怒り過ぎると、気上がる。肝の気が激しく上昇(気が上がったままになる)。血も逆行する。
「憂」「悲」悲しみ過ぎると、気消える。肺の気が弱まって停滞する(気がめぐらなくなる)。意気消沈する。やがては脾も損傷する。
「思」考え過ぎると、気結す。脾の運化作用がはたらかなくなり、気の動きが滞る。気の停滞は心も痛め、心が痛むと、動悸・不眠、脾が痛むと食欲不振があらわれる。
「恐」恐れが強いと、気下がる。腎の気がとどまれなくなり、下に落ちてしまう。失禁することがある。脾も傷つける。
「驚」あまり驚くと、気乱れる。腎が変調し、混乱する。
日常で使う言葉でも、「怒りで(気が)逆上」「思い悩んで気がふさぐ」「憂い悲しんで意気消沈する」「びっくりして気が動転(乱れる)する」というように使ったりしていますよね。
実際は、心や肝の影響を受けている症状が多いようです。心の異常による動悸や不眠、肝の異常によるイライラ感や抑うつ感など。悩みがあると、食欲が無くなったり、胃潰瘍になったりすることも。
生きている環境も状況も、日々変化しています。「今」がずっと続くように思えても、始まりがあれば、終わりもあります。出来るだけ、ひとつの感情だけに浸りきらないよう気をつけて過ごしたいですね。