外部から入ってくる6種類の病因を「六邪(ろくじゃ)」または「六淫(ろくいん)」と言いいます。六邪(外邪)による病気は、季節や時間、周りの環境と深く関わっています。六邪は、最初は皮膚や口、鼻にとりつき、だんだんとからだの奥深くに侵入すると考えられています。複数の邪が同時に体内に侵入して病気をおこすこともあります。
●「風邪(ふうじゃ)」急に発病し、症状が移動し、症状が出ないこともある。頭痛・鼻づまり・のどの痛みなど、からだの上部に症状が出やすい。他の邪気を先導して一緒に侵入することもある。春に多い。風に弱いのは肝臓。肝臓は春先の環境の変化(進学や就職、異動や転勤など)によるストレスにも影響を強く受ける。
●「寒邪(かんじゃ)」冷気にあたって冷え、気や血の流れが停滞し、痛みがおこる。寒け・手足の冷え・下痢。風邪のひきはじめにこのような症状が出やすい。寒邪によって、陽気が抑制され、からだを温める作用(温煦作用)が低下し、また経絡や筋脈が収縮するからと考えられる。臓腑に直接侵入することもある。冬に多いが、薄着や雨に濡れたり、汗をかいたりした後、冷えた場合も。寒さに弱いのは腎臓。
●「暑邪(しょじゃ)」夏の強い暑さで、からだが熱くなりすぎる。発熱し、顔が赤くなる。汗が出すぎて津液(しんえき)を消耗し(汗は津液)、のどが渇く。汗とともに、気も漏れてしまい、息切れ・からだに力が入らない・無気力・ひどいとけいれんを起こす。熱中症は暑邪の典型的な例。湿邪とともに侵入するとことが多い。熱に弱いのは心(心臓)。
●「湿邪(しつじゃ)」湿邪は水分なので、重く、下へ流れる性質があり、なおかつ粘り、停滞する性質でもある。梅雨や秋雨前線などが停滞し、小雨が降り続くと、湿気がからだにたまる。湿邪がからだに侵入すると、頭や手足が重だるく感る。関節などに侵入すると、気、血、津液の流れが悪くなり、関節痛などがおきる。便が粘ついて出にくくなったり、足にむくみがあらわれる。湿邪は粘着質があるので、いったん侵入すると、病気そのものも停滞し、治りにくい。湿に弱いのは脾臓。
●「燥邪(そうじゃ)」乾いた風が強い秋や冬に多い。乾燥した空気を吸い込むと、水をめぐらせている肺と津液が損傷を受けると考えられる。夏の水不足による極度な乾燥時もからだが乾いてくる。肺は乾燥に弱いので、咳や粘つく痰、ぜんそくなどが出る。皮膚は肺とつながった器官なので、肌もかさつく。
●「火邪(かじゃ)」暑よりもっと暑い状態。火邪が侵入すると、燃え上がって高熱を発する。顔や目が赤くなり、津液や気を消耗し、けいれんすることもある。また、熱が脈絡に入ると出血しやすくなる。体内の同じ場所に長期間にわたって火邪があると、筋肉や組織が変性し、腫瘍になりやすいと言われている。
昔は、ほどんどの病気は風邪(風)にのって運ばれて来ると考えられていたので、「痛風」「破傷風」「中風(脳卒中にあたるもの)」など「風」がつく病名が多いようです。
人間の身体は、暑さや寒さなど、自然の気候変化に合わせて適応できるようになっていますが、あまりにも暑かったり、あまりにも寒かったりすると、身体が対応出来ずに病気を発症します。
悪いものを運んで来る風は「風邪」、寒すぎる冬や冷夏は「寒邪」、暑すぎれば「暑邪」、もっと暑ければ「火邪」、じめじめした環境は「湿邪」、乾燥しすぎる環境は「燥邪」となります。
ちなみに、六邪には含まれませんが、「疫癘(えきれい)」があります。感染性と流行性がとても強く、口や鼻から入ってくるもので、ウイルスや細菌などの病原体が考えられます。コロナウイルスは、こちらに分類されますね。
近年は地球規模で異常気候となることが多くなっています。身の回りのいろいろな機器や服装などを使って、「~過ぎる」状態が長時間にならないよう気を付けたいですね。